退職金の税率が恐ろしく低くて椅子落ちした

2009/06/23 03:28 | 1 Comments

「退職金という制度で従業員を会社にしばりつける時代はもう終わらせていいんでは」というようなことを以前書いたんだけど、この前退職金の税制を知ってひっくり返ったのでメモ。

 

この国では所得税の税率は「超過累進税率」になっていて、たくさんもらえばもらうほど、税率もどんどんアップするという仕組みになっている。たとえば、所得税の速算表というのを使ってざっくり計算してみると、次のようになる。

・所得金額が300万円 -> 所得税額は20万円
・所得が600万円 -> 税額は77万円
・所得が1200万円 -> 税額は240万円

300万円のケースだと所得の1割にも満たないのに、1200万円だと所得の2割も払うことになってしまう。これが超過累進税率である。

 

この考え方で行くと、退職金で2000万円とか3000万円とかもらった場合には、税額もすごいことになるんじゃないだろうか、と思ってしまうけれど、実際には全然違う。というか退職金については、ものすごく優遇された税制になっているのだ。

退職所得の計算式は「(収入金額-退職所得控除額)× 2分の1」ということになっている。そもそも最初から2分の1という優遇っぷりである。

さらに「退職所得控除額」っていくらなの?と調べてみると、勤続年数が20年以下の場合は「40万円×勤続年数」(最低80万円)、20年を超える場合は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」となっている。つまり20年を超えれば控除額がさらに大きくなるということだ。

試しに「勤続30年で2500万円の退職金をもらった人」で計算してみると、実際に課税される金額は、2500-800+(70*10)の、さらに1/2だから、たった500万円ということになる。2500万円もらっていたとしても、実際には500万円分に対してしか税金がかかってこないわけだ。つまり2500万円もらっても、税額は60万円くらいで済んでしまう。

ちなみに、給料としてもらった金額にも、給与所得控除額というのがあるが、控除される額は次のようになる。

・給料が500万円 -> 154万円控除
・給料が1000万円 -> 220万円控除

つまり1000万円給料をもらったら、780万円分に対して税金がかかってくるわけだ。つまり、1000万円もらったら、税金として116万円くらい払うことになる。

つまり、退職金だと2500万円もらって税金60万円、給与だと1000万円もらって税金116万円ということだ。割合で計算すると、前者が2.5%なのにたいし、後者は11.6%ということになる。

 

これだけでも大きな違いだが、退職所得は「分離課税所得」という扱いになっていて、他の所得と合計せずに税額を計算できる。さっきも書いたように、所得税は累進税率だから、合計額が大きくなればなるほど税率も上がってしまう。だから、金額を分けて計算できた方が税率も下がるわけである。

たとえばオークションとか懸賞、競馬あたりで50万円稼いだ(=雑所得)場合、会社から給料をたくさんもらっている人ほど、その「50万円」に対する税率も上がるのだ。具体例は次のような感じ。

・所得が600万円が、オークションで50万円稼いだ
  -> 所得税額が10万円(50万円 x 20%)増える
・所得が1200万円が、オークションで50万円稼いだ
  -> 所得税額が18万円(50万円 x 33%)増える

つまりオークションでの稼ぎが同じであっても、他の所得が大きい人はそれだけ高い税率がかけられてしまう。その点、退職所得は合計しなくていいわけだから、他の所得がどれだけあろうと、退職所得自体はもちろん、他の所得にかかる税率も低いままで抑えられるということなのだ。何という優遇っぷり。

 

 

いろいろ数値を挙げてきたけど、結局言いたかったのは、税制という切り口から見ても「1つの会社に長く勤め続けなさい」というコンセプトでインセンティブ設計がされているということだ。いわゆる日本株式会社の時代はそれでよかったのかもしれないけど、今は人材の流動性ができるだけ上がるように、この辺りの制度も再設計した方がいいんじゃないかと思う。現在は金融資産の8割を50代以上の人が保有しているというオソロシイ状態らしいけれど、所得税率の設計も結構影響しているんじゃないだろうか。

 

・・・ちなみにこんなことをグダグダ書いているのは、Eラーニング関連で税制とかもいろいろ勉強中だからです。ITベンチャーの人間が資格マニアまっしぐらとかなにそれこわい

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この記事へのコメント
篠田(2010/08/11 02:44)
退職金の税率が安い理由はこうではないですか。
退職金は「退職時」の一時金ではなくて、入社してから退職するまでの給料の一部を会社が勝手にストックした合計だということ。だから、ストックオプションのような一時金と区別して課税されているのだと思います。本来、月給に含まれている一部の集合体な訳ですから、当時の月給に含めた形で再度、税を計算してみると・・・、それでも現状税制はぼったくっていると思いますけど。
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