「頭のいい人は、難しい概念も簡単に説明できるはずだ」問題について

2007/10/09 12:15 | 3 Comments

「頭のいい人は、難しい概念も簡単に説明できるはずだ」問題というエントリを見た。

少し前に友人からのコメントでこういうのをもらっていた。
専門外の関連分野の人と交流することがしばしばあるのですが、本当に頭の良い人はただ闇雲に自分たちだけで通用する難しい言葉を並べるということはせず、相手にとって最も問題となっている事にちゃんと焦点を当てて「わかりやすく」説明してくれるなあ、と思います(もちろん、議論の深さによってはどうしても専門的な言葉にならざるをえませんが)。


「議論の深さによっては」あたりまで含めて、まったくその通りだよなあと思う。上の「頭のいい人は~」の話も含め、このあたりについて思っていることを少し詳しく書いてみよう。まあ「頭のいい人は~かどうか」という問いは、「頭のよさ」という言葉自体があいまいなので、そもそも問いが間違っているんだけども、それはいったん置いておき。

まず、分かりやすく説明できることと一般的な頭の良さは直接は関係ない。むしろ、説明しようとしている事柄に対する理解の深さ、関連分野の知識をきちんと押さえているかどうかの方が大切だ。説明すべき事柄(分野)の全体像が正しく見えていないと、はしょっていい事柄や、あるいは切り捨てていい概念を正しく見極めることができない。そもそも「分かりにくい説明」をもう少し詳しく考えてみると、次の2つに分類できるんじゃないだろうか。

a.ピントがずれている(今はどうでもいいはずの話ばかりしている)
b.飛躍している(伝えるべきことの理解に必要な前提をフォローできていない)

たとえば、かけ算の話を相手に理解してもらおうとするときに、引き算の話とかゼロの起源なんていう話はどうでもいい話だ。それに対して、相手が足し算を理解していないのであれば、そこはちゃんと順を追って説明する必要があるわけだ。(かけ算=足し算を繰り返す処理である、と考える場合。)


ちょっと話がそれるが、これは「足し算や引き算」みたいな知識を伝えるときに限らず、情報を伝えるときにも同じだと思う。
たとえば、契約が取れるかどうかという商談の報告を上司にするのであれば、まず第一は「契約が決まったのかどうか」ということであって、電車が遅れて商談に遅刻しそうになって、とかそういう話は後でいいわけだ(a)。
あるいは、新入社員が先輩に質問するときにやってしまいがちな「いきなり細部の質問をしてしまう」というのも、本質的には同じ誤りだろう。たとえばプログラムを書く仕事で、いきなり「このif文なんですけど」みたいに聞かれても答える側は困る。今何のプログラムを書いていて、その中のどの処理の話で、、、とまず順を追って説明してもらう必要があるわけだ(b)。


話を戻すと「分かりにくい説明」には、aとbの複合として「必要以上に正確に伝えようとしてしまう」というパターンもある。だから、分かりやすい説明をしようとすれば、話をある程度単純化する必要がある。たとえば自分の例で言えば、ドリームゲートの記事で「サーバー」とは何かという説明をするとき、こういう書き方をした。
サーバーとは、一言でいえば「他のパソコンに対し、データや機能を提供するパソコン」のことです。

この説明は全然正確ではない。というのは、メインフレームなどの「パソコン以外のサーバー」もあるからだ。でもそうすると、じゃあメインフレームって何よ、という説明もせざるを得なくなってしまい、話がどんどんそれていってしまう。それであれば、そもそもこの記事のテーマが「中小企業向けのIT活用法」であるということを考えて、今から新規でメインフレームを購入することはほとんどないだろうから、話をPCサーバーに限定してしてもいいだろう、と考えたわけだ。

ただ、話を単純化することは、相手に「分かった」という感じを持ってもらうには必要なのだが、さじ加減が難しい。何も考えずに単純化してしまうとウソをつくことにもなりかねないからだ。間違った(必要以上に単純化された)形で「分かった」と思ってもらうくらいなら、「よく分からないけど難しいらしい」くらいでとどめてもらった方がいい、ということもある(特に技術的な知識の場合)。今は「納得度」と「理解度」のどちらをどれくらい優先させるべきか、正しく判断するためには、やっぱり全体像(プラスそのときの状況)が見えていないとダメなのだ。


あと、とにかく「難しい」言葉、用語を使ったらダメなのかというと、そうとも限らない。という話も書こうと思ったけど、長くなってきたので一回ここで切っとく。
この記事へのコメント
Makii(2007/10/09 14:00)
勉強になりますた。

Uruに出会った時には既ににこういう話し方ができていたと感じているんだが、このエントリに書いたような考え方はa)本を読んだりして学んだのか、b)昔からこのようにロジカルに話すことができた(つまり普段からそういう考え方だから今まで外からの情報で学んだ事はない)のかどちらなんだろう?

a)ならば良い書籍を紹介してくださいな。自分はマッキンゼーとかフランクリン・コヴィー辺りが出している本しか読んだことないので。
uru(2007/10/11 14:19)
正解は「c.今考えた」でした。残念。

っていうのは半分冗談だけど、基本的には自分の頭で考えるしかないでしょうね。(読書もヒントにはなるから大切ではあるけど。「学びて思わざれば~」というヤツですな。)
そういう意味ではこのエントリも、今までぼんやり感じていたことを文章化してみたというだけであって、書いている本人がちゃんとできているのかはまだ別問題だったりする。考えをまとめるのはあくまで第一歩ですな。
Makki(2007/10/17 12:42)
なるほどね。

公開しているしていないにかかわらず、このエントリのような自分のその時々の考えをまとめるというのは、後々思い返すのに非常に役に立ちますな。


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